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カートが空です


EKA: Clothes For Poets

うっすらと入るストライプやドットも、踊るようにそっと施された刺繍も、そのベースとなるテキスタイルも、ハンドクラフト=手仕事でつくられるインドのファッションブランドEKA。デザイナーのRinaさんとディレクターで夫のSundeepさんは、PasandディレクターMamiの古くからの知人。彼らの、インドに残る手仕事へのリスペクトと、そこから生まれる詩的なクリエーションは、とても美しくつくられていました。

まずはニューデリーにあるEKAのショップへ。淡い夢の中のような色使いに、やわらかなテキスタイル、ふわりと広がるシルエット。ドレスのスタイルはガーリーなのに、どこかしっとりと根を張るような落ち着きを感じさせます。それはきっと、ショップに置かれたアンティークの工芸や、古材を随所にあしらったインテリア、そして新しい裸婦像のオブジェのように現代のエッセンスのミクスチャーが、ブランドの精神性を伝えてくれているから。

「過去から借りて、未来に貸す。今を生きる私たちはただ、大切な遺産を、次へと伝え受け渡すだけの存在」とRinaさんは語ります。モダンとノスタルジーの掛け合わせ、ファンタジーと日常の往来。ブランドの持つ、古くから連綿と続くクラフトへの敬意と、それをモダンに、そして詩的に昇華させるデザインの自由が、ショップのしつらえにも表れています。

ショップの奥にある小さなパティオ的な中庭。植物が繁り、時を積み重ねたテクスチャーを感じるディテールがあちらこちらに見つかります。奥に見える古い扉を開ければ、another worldに繋がりそう。

ショップには鈍く光る真鍮で「CLOTHES FOR POETS」(詩人たちのための服)と。EKAの服には物語があります。

「EKAは、私が本当にインドのテキスタイルに魅せられてきた集積のようなもの。幼い頃から織物をつくる過程や人が着る様子を見てきました。愛着を持って家族の間で受け継がれ、大事にされてきたテキスタイルは、今も私のクローゼットにあります」

Rinaさんのテキスタイルへの憧れが、EKAの原動力。コレクションはほとんどが手織りの生地。インド各地にあるいくつかの手織りの村で織られたコットンやシルクなどの天然繊維を、3階建ての自社工場で、生地の刺繍、ブロックプリントなどの加工から、衣服の縫製まで、ほぼ全ての工程を網羅しています。

緑あふれるアトリエのエントランス。「我が家にも大好きな庭があるの」とRinaさん。

EKAの服は、レイヤードさせても美しく共鳴する、瑞々しいナチュラルな色彩。

ブロックプリント(木版)の型のアーカイブ。過去のコレクションで製作したものも全て保管しています。

手描きのモチーフを削り出し木版に。

ブロックプリントの職人。細いボーダーラインを、寸分違わず繋ぐように版を押していきます。

刺繍をする女性たち。よりハードな体勢が求められる刺繍には、男性の職人が。

create consciously | craft inclusive | consume mindfully
丁寧に意識を働かせてつくり クラフトを詰め込んで 心を込めて使う
EKAのクリエーションにおける態度を表して、テキスタイルタグにプリントしています。

プリントする際、下地として張っている基布のふちには、さまざまなプリントの色と柄が重なっていきます。偶然生まれる色柄の重なりも美しいのです。特別に美しく感じられた布は保存しておいて、スペシャルピースをつくることもあるそうです。

EKAは、小規模生産でロスをなくし、長く愛される服をつくり、また地域に残る手仕事や職場の環境を大切にする姿勢から、サスティナブルファッションとしての評価が高いブランドです。ただ、サスティナブルであることは、彼らにとっては活動の「結果」でしかないのだと言います。手紡ぎや手織り、刺繍からプリントなどの手仕事が生む美しさ、「クラフト」をベースとしたクリエーションをとても大切にしています。

タグにプリントされる、create consciously, craft inclusive, consume mindfully の言葉が、彼らの精神を表しています。手仕事を取り入れて、丁寧に意識を働かせてつくり、それらを胸に、着る。ロマンチックで軽やかなデザインの内側に、デザイナーRinaさんの眼差しが瑞々しく宿ります。

ポップアップに出すアイテムをRinaさんと相談中のMami

Text: Yuko Mori
Photograph: Akemi Kurosaka

EKA: Clothes For Poets