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カートが空です


Beloved India: Mami’s eyes

PasandディレクターのMamiは、20年以上前にインドとのビジネスを始めました。 ロンドンに暮らしていたときに、Made in British Empireとタグに書かれたインド製の素敵なヴィンテージドレスが、ワードローブに自然と集まっていました。これほど多くのインドのドレスがあるのなら、インドでドレス作りをするのもいいかもしれないと思い、スーツケースにたくさんのドレスを詰めてインドへ向かったのが最初です。
年に何度も現地を訪れるMamiだから知る、インドの人々の愛すべきところ。

Mamiがインドでのものづくりをスタートしたころ、折よく独立したての若き縫製の担い手、Amitと出会いました。それ以来、彼がビジネスパートナーとなって、インドでの生産を全てコントロールしています。夢見る青年であったAmitの、今に至るお話、そしてこれからMamiとつくる夢の話も面白いのですが、それはまたの機会に。


インドには、首都ニューデリーの混沌やエスニックなデザインから一歩踏み込んで奥を覗き込めば、長い歴史の中で育まれた美しさが深く広く横たわっています。


Mamiは、10年以上前、インドを今よりも頻繁に訪ね、滞在していた時期があったそうです。その頃はいわゆるバックパッカー以外には観光客も見ない時期で、世間のインド観はエスニック一辺倒。Mamiの知る一面とはまるで違ったそう。


インドでのものづくりの魅力は、テキスタイルの独特の美しさと色彩や豊富なテクニック、人の手でしかつくれない繊細なディテールがいまだに息づいているところにあります。

でもそれ以上に、ものづくりを続けていられるのは、インドの人々のチャーミングな人柄によるところが大きい、とMamiは話します。

「インドの人たちは大抵がポジティブで明るい。私が突然思いついた変更にも、フレキシブル。ユーモアもあって楽しく仕事ができます。おおらかな性格である分、日常の仕事が私たち日本人からするとルーズに感じる面や、オーダーが全然違う内容で戻ってくることもある。でもその誤解から生まれた間違いは、修正をすれば良いし、場合によってはアイデアを変更してそのまま採用することもあります。こちらにもその余白があることは決して悪いことじゃないと思っています」

手刺繍によるバッグをつくる女性

デリーの工業地域グルガオンで、約1年前に新設したAmitの工場。整然として、静かな空気。


インドでの生産は、日本から見ればとても安価です。でもMamiは、フェアであることを大事にします。相手に求めるときは、まず自分から。スタッフの雇用環境を少しでも整えて、Amitも、スタッフたちも、安心した環境で仕事を進められるように。Amit自身が、サスティナビリティを重んじる人物であったことも幸いして、スタートして20年超の間で、家庭の事情以外で辞めたスタッフはほとんどいないと言います。

まずはオーダーする側が、できるだけフェアな関係性をつくり、丁寧な仕事で応えてもらう。その繰り返しが、Pasandを強くし、インドのパートナーを強くするのかもしれません。


ne Quittez pasのサンダルを製造する工場。インドでは、作業する人々の背筋が伸びて、姿勢がよいことがとても印象的だった。

インドで感じる、寛容さ。それはきっと「カルマ」の考え方が根付いているから、とMamiは言います。日本語では因果応報とか、宿命、と訳されるカルマ。
「インドの人たちは信仰心が強く、望みすぎることがない。自分が生きるこの人生に善も悪もなく、神様がくれたもの、と思えるのは、とても幸せなこと。人から受けた恩は返さなければならないという精神が強く根付いています。受けたものを、自分もまた誰かに渡すという考えを感じます」

Mamiの決断はいつも素早く、そして決めたことはスピーディに進めます。インドではそのスピードは自ずとは生まれないのです。伝える時は、キッパリ、はっきりと。それを受け入れたり、受け流したりして、自分を動揺させないインドの明るさ。その上で関係性を少しずつ積み重ねて、今があります。

ビジネスパートナーのAmitとは、こうしたやり取りを重ね、互いにほぼゼロからビジネスを育ててきた家族のような関係です。Amitの縫製工場も今では大きく成長して、たくさんのスタッフを抱えるようになりました。

Text :Yuko Mori
Photo:Akemi Kurosaka

Beloved India: Mami’s eyes