
石を掬う手が繋ぐ、女性たちの未来。
ジャイプール、UPALAの工場にて。
ジャイプールの旧市街は、どこまでもピンク色。1876年、イギリスの皇太子を迎えるために街ごと塗り替えられたというサーモンピンクの壁は、今も法律で守られています。アーチが連なる街路を抜け、碁盤目状に整えられた古い都市計画の奥へ。乾いた風が吹き抜ける先に、UPALAの工場があります。
UPALAとは、サンスクリット語で「宝の石」。ジャイプールは、世界で流通する天然石の多くが経由すると言われる宝石加工の街です。18世紀にこの都市を築いたマハラジャが全国から宝石職人を招いて以来、石を磨き、留め、形にする技術がこの土地に根づいてきました。かつてはインドの王妃たち“マハラニ”と呼ばれる女性たちが、クンダンやメーナーカリといった伝統技法で彩られた宝飾品を身に纏い、その華やかさは西洋のジュエリーメゾンとも交わりながら、独自の美意識を築いていました。
UPALAは、そのマハラニたちのアンティークジュエリーにインスピレーションを受けています。けれどそれは、過去をそのまま再現することではありません。古い意匠の中にある美しさを掬い上げ、今の暮らしに寄り添うジュエリーとして仕立て直すことです。
工場を訪れると、女性たちが囲む作業台の上に、小さな天然石のビーズが並んでいました。エメラルド、アメジスト、アクアマリン、ムーンストーン。女性たちがその石をひとつずつ掬い上げ、細いコードに通していきます。UPALAでは、彼女たちのことを「ビーディングガール」と呼んでいます。
インドでは、人の数だけ手作業が発達してきたと言われます。手で作るものは、大きな設備投資なしに始められるビジネスになりうるからです。特にラジャスタン州では、女性が自宅や地域の中で取り組める仕事として手仕事が広がってきました。ビーズワークやマイクロマクラメ──通常のマクラメよりさらに細い糸で繊細な結び目を積み重ね、石を包み込むように留めていく技法──は、機械では再現できない細密さを持ちながら、自分の手と生活圏の中で習得できる技術です。その特性が、女性たちの仕事と技術を支えています。
工場で生まれるジュエリーの中で、ひときわ女性たちの手に深く結びついているのが「チャンドラ」です。サンスクリット語で「月」を意味するこのシリーズは、誕生石とビーズをあしらったネックレスとブレスレットのコレクション。満ち欠けする月のように、強さから揺らぎまで、リズムのままの自分を大切にし、ナチュラルに纏えるビーズネックレスです。日々の装いにやさしく溶け込み、大切な方へのギフトにも、自分自身のお守りアクセサリーにもふさわしい一品。長さ調節可能なアジャスターチェーンと、UPALAのオリジナルプレートが付いています。
チャンドラは、ほとんどが女性たちの手仕事でできています。始まりから女性たちが手がけてきたアイテムで、テクニックが向上するにつれて品質が上がり、やがてUPALAの主要商品に育ちました。今では1日に30本を作ることができるようになりました。女性たちの技術の成長と、ひとつの商品の成長が、そのまま重なっています。
かつてマハラニが纏った宝石の記憶は、この街に脈々と受け継がれてきました。けれど今、その記憶を新しいかたちに変えているのは、石を掬い上げるビーディングガールたちの手です。UPALAのジュエリーには、ジャイプールという土地の歴史と、そこで働く女性たちの今が、ひとつずつ結び込まれています。
Photography(India Part) / Akemi Kurosaka
Text / Rio Hirai
Chandra Beads Collection
石を掬う手が繋ぐ、女性たちの未来。
ジャイプール、UPALAの工場にて。