

Hand Embroidered Potli Bag
シルクやベルベットの滑らかな生地に美しく紋様を描くスパンコール。小さなPotli Bagは、インドではウェディングパーティに出かける女性たちに彩りを添える華やかなアイテムです。キュンとさせるポイントがぎゅっと詰まった、美しいミニバッグをビジューがわりに連れ出して。
Potliとは、ヒンディー語で「包む」や「まとめる」という意味の言葉。ぎゅっと絞ってまるみを出す伝統的な巾着バッグは、滑らかなシルクやベルベットのシックなテキスタイルに、男性たちが手刺繍で留めつけるスパンコールやビーズで、キラキラと美しい紋様を放ちます。

今回ご紹介するPotli Bagは、そのほとんどが手仕事によるもの。アリ刺繍やザリ刺繍といった、シルクやラメ糸を用いてスパンコールやビーズと共に縫い込む手刺繍のテクニックを使います。床に座り、刺繍枠の中に装飾を施していく男性たち。ひと針ごと、緻密に丁寧に進められます。
様々な種類のビーズやスパンコール、ミラーやストーンが一つ一つ入り混じる複雑な美しさは、こうして生まれています。この工場では、タッセルなど装飾の仕上げも丁寧に手作業で行われています。

女性たちは細かな手作業の仕上げやチェックを。

美しいサリー姿が目立ちます。アクセサリー使いにも目が奪われて。この女性は足の指にきらりと光るリングを。アンクレットのチャームものぞき、おしゃれ。

バックシャンな女性。ピアスも、まとめ髪も美しい。

このPotli Bagを手がけるのは、機械から手仕事まで、さまざまな技法を駆使するインドの刺繍メーカー。大型機械による刺繍でも、繊細で複雑な図柄を、ハイクオリティで表現できることで、世界中のアパレルブランドからの受注が絶えません。
Potli Bagも、ハンドクラフトがすべてではなく、縫製や刺繍の一部は機械を使い、手仕事と融合させて仕上げています。伝統的なバッグを、よりクオリティ高く、効率を高めながら。
機械刺繍とはいえ、熟練の職人によるコントロールが求められ、それは手刺繍とはまた違う技術。ベースの布を張るテンション、糸切れへの素早い対応、状況の見極めをしながら、効率よくエレガントな刺繍が施されていきます。

Potli bagのセレクトで実際に工場を訪れたMami。このメーカーが、世界中からの大量発注にも応えられるクオリティとキャパシティを保ちながら、手刺繍のような、時間のかかる繊細な美しさを守っていることがよく分かりました。

女性たちは全従業員のおよそ3割。女性は夜間に働けないので、日中の男女比率は5割と同業の中では高いほう。実際にものづくりの現場を訪ね、話を聞くうち、その経営のあり方に共感したというMami。
コロナ禍以前は、世界からの受注だけで成立させていた経営。コロナ禍、世界からの発注が途絶えたとき、Vikasさんはすぐさまオリジナルのマスクにワンポイント刺繍を入れて販売を始めました。誰一人解雇したくない。受注を待たず、発信先行に切り替えてビジネスを押し上げました。今は伝統的なPotli Bagなどの刺繍バッグが、注目を集めています。
Pasandも、コロナ禍ではスタッフの解雇も減給もしないと決めて、全国の卸先にあった在庫を買い戻してお取引先の当面のビジネスも守りながら、自分たちのオンラインストアで販売をしていきました。「常に立ち止まらず、ネガティブな状況をポジティブに打開していく」。その姿勢に、Pasandも深い共感があります。

職人の心と精巧なつくり。革新と進化の追求。 品質と、スタッフを守る資質。
美しさ、かわいさに惹かれて訪ねた先で、思わぬ企業理念に共感する──Pasandが集めるものたちは、そんな縁に恵まれた出会いが多いのです。そして、そうした縁がつながり、「Pasand」の言葉が意味する「お気に入り」となっていく。きっと、「いい」と思えるものの奥には、共感できる精神性が宿っているのだと、この事実が教えてくれます。
Text: Yuko Mori
Photograph: Akemi Kurosaka
Hand Embroidered Potli Bag