Skip to content

Cart

Your cart is empty


Pasand Home 気持ちは、民藝。日々、使ってこそ

前回に続き、オーナー夫妻の自邸をレポートしていきます。今回は、くつろぎのためのフロアから始めましょう。印象的なブルーのラグに支えられたコーナーを取り巻くように、寝室とバスルーム、クローゼットがあります。置かれた家具のセレクトは2階と統一感がありながら、光の入り方、合わせるアートのシャープさなどが変化して、また違う印象をもたらします。

ブルーのラグは、実は前に住んでいた家の寝室に「よく眠れるように、深海のイメージで」と敷き込んでいた絨毯を切り取ってラグにしたもの。きちんと選んだお気に入りを、手放さずに使う(きちんと選んだものだからこそ、長く使える)、というのが二人の考え。軽やかな現代アートが窓辺のグリーンを映し、朝の爽やかなムードを誘います。

寝室。窓辺の豊かなカーテンには、インドの市場で見つけてまとめ買いしたタッセルを。グリーンのラグは、モロッコの「ベニワレン」。オフホワイトにブラウンのラインが入ったものはよく見ますが、この色は珍しい色で、ベッドリネンのカラーコーディネートを際立たせます。ライトは2つ、フォルム違いを選ぶのも心地よいアクセント。

ベッドリネンは、インドのブロックプリントを施したPasand Homeのもの。インドで手のひらサイズの小さなブロックを一つひとつ手で押して生まれるブロックプリント。人の手で丁寧につくられたものに包まれていることは、安心のひとつ。パリ・merciで購入した無地のクッションとも楽しく調和します。

寝室からクローゼットに向かうと見える小さな壁のコーナーに、そっと置かれた現代アート。

洗面スペースから続く洗濯コーナーと、その奥のバスルーム。洗面スペースとバスルームを緩やかに区切る、白壁のアーチ。完全に閉じず、奥のバスルームに密やかなコクーンのくつろぎをもたらす効果的な壁面づかいです。窓から差す光が美しく、夜だけではなく、陽のある時間にゆっくりと湯船につかることもあるそうです。

奥のタイル壁と床のタイルの色をグリーンで統一。床のタイルは、Mamiの出身地である青森から、十和田石を選びました。温泉でもよく使われる保温性と滑りにくさ、また消臭、消音に優れ、抗菌にも優れる十和田石は、実際、すぐにカラッと乾き抜群の使用感なのだとか。タオル掛けにはタオルウォーマーを使い、湿気とは無縁の快適な日々だそうです。洗濯物入れは、シーグラスのバスケットを使用。自然なブラウンとグリーンのツートンが、空間と調和し穏やかなムードです。

「この家は、全体のデザインや考えは豊田がつくって、建築家の山内玲子さん(HOU一級建築士事務所)が具体的な設計をしてくださいました。空間の緩やかな仕切りや、壁面を仕上げる左官仕事の取り入れ方、ちょっとした間合いの取り方は、山内さんの提案が本当に気持ちよくて」
これまでも自邸のリノベーションなどを通して、長年の理解者である建築家との信頼関係で、「家具ありき」から始まった家づくり。全体の設計や、こうしたディテールの仕上げに、美しいバランスが生まれていきました。

例えば、これは2階のトイレ前の手洗いスペース。こちらには、美しいマーブル模様のカウンターを、バスルームの壁と同じ左官アーティストの本田匠さんが仕上げました。その場所に合う厚みや幅のデザインは、阿吽の呼吸で山内さんの提案を受け、決まっていきます。タイルとの色の組み合わせがとても印象的です。UPALAのシルクジュエリーボックスのビビッドな色彩も、シックに受け止めてくれる、頼もしいデザインです。

階段上のコーナー。アボリジナルアート、イサム・ノグチのライト、中井波花のオブジェ……と、ここも国籍の入り混じる構成。しかしどれも人の手を介しつつ、自然との対話を重ねてきたつくり手たちの作品。

上がってきた時と、下に降りるときでは、見え方もまた違います。階段上のインテリアは、印象をつくる大事な要素だと感じます。

玄関に入ると、まず黒い玄昌石張りの、静かな空間が待ち受けています。左から上に伸びる階段 が、2階のダイニングルームへの階段。

椅子にふと落ちた木漏れ日の美しさ。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」が伝える、影の中にある美しさを、この1階のフロアは、健やかに伝えてくれるようです。

暗がりのある空間でも、色調のトーンが揃い美しい花器。スウェーデンの有機的なフォルムは、ただ置くだけでもオブジェとして絵になり、植物を挿してより印象を広げてもサマになる、用の美を満たしています。インド、日本、スウェーデン。この3国をつなぐのは、「用の美」への眼差しもあるかもしれません。

ドライフラワーが、ほのかな灯りのような役割を得た、1階奥のスペース。アルミの打ち出しがやわらかな光を放つ花器と共に、鈍い光の美しさが引き立ちます。

「私たちは実際に暮らしの中で使いたいと思って、さまざまなものを集めています。インドやロンドン、パリ、あらゆる場所のマーケットで、雑然と売られているものでも、自分たちにとって、いいものだと思えば手に入れます。豊田は、その辺りの感覚がとても鋭くて、 サッと見つけてきますね」
二人で、感覚に任せて、華美というのではなく、「よいもの」を。
「豪華な感じが好きではなくて、日常で使うことが似合うものが好き。たとえ高価なものだって、眺めておくのではなくて、気持ちは、民藝。人がつくったもので、作品とも言われるけれど、やはり、日々使うことが大事だと思います」

Photograph: Akiko Baba
Text: Yuko Mori

Pasand Home 気持ちは、民藝。日々、使ってこそ